さて、私は今年の頭に、ドキュメンタリーシリーズ「民主主義」を見ていました。
NHKでの初放送が2007年とのことですので、少なくとも3年以上前の作品群になります。ですが、全く古く感じさせないのは、これで浮き彫りになった問題が現在も解消されておらず、内容がとても示唆に富んでいるからではないでしょうか。
特に今年に入ってからは中東方面で自由と民主主義を求めての動乱が起きていて、民主主義はそれなりにホットなワードだと思います。
http://www.whydemocracy.net/
http://www.nhk.or.jp/democracy/
全10作。全て印象的なものでした。気が向いたらそれぞれの感想を書き溜めたいと思いますが、今回は特に書きたくて書きたくて仕方ない作品をひとつ。
中国 "こども民主主義" -Please Vote for Me-
武漢の小学校での級長“選挙”のドキュメント。我が子を当選させようと、親が助言を始め、介入し、地域を巻き込むバトルが始まる。いわゆる西洋型民主主義の無い中国社会で、「民主主義」的選挙は「過酷な競争」に見えていく。
(NHK公式サイトより引用)
観終わった後、いろいろな感想をネットで調べました。
その中で、中国と日本を比較して感想を書いている方がいらっしゃいました。
中国ってこういう国なんだよなとか、日本にあんなバイタリティはないとか、そういう視点。
でも私は、これが中国だからどうという問題ではないと思っています。
中国だからこそ明確にわかりやすく浮き出た面はあります。教諭の煽るような助言や、親の過剰すぎる介入がなくては、現れない現象もありました。
ですがこれを「中国は……」云々と矮小に受け取るのは、果たしてどうなのでしょう。
仲間の囲い込みや根回しに懸命になったり、中傷合戦をしたり、買収をしたり。
これは"民主主義"の一面をよく表していると思います。
ただ単純に「選挙をします、ただしルールはありませんので自由にやってください」と言われたらどうなるかをとてもわかりやすく示している、そんな気がします。
実際、公選ではない選挙などというものは、日本であってもそんなものではないでしょうか。例えば、○○委員とか。
権力というものは、人によっては本当に魅力的なものです。
権力があれば、他人を自分に従わせることもできます。
それなら、どうすれば選挙のシステム上で権力を得て維持できるのかと言えば、要するに、メンバーの不満を生み出さなければ、もしくは不満以上の満足を与えることができれば、リーダーを続けることができるのです。
不満が満足を上回っていなければ、いずれ再任されます。
それが正しいのか否か別として。
民主主義はその程度のものでもあると、私は思っています。
そんな中、殊更印象的だったのは、選挙中も開票直後も、熱がやたらに入っていたのは候補の3人とその熱烈な支援者と親だけというところ。
親はまるで自分のことのように力を入れて支援している。子供に次々とアイデアを注ぎ込んでそれを実行させる。
候補の3人は、親とクラスメイトの間に挟まれているからか、イライラしたり浮き足立ったり泣き出したり。
一方、他のクラスメイトは、気分屋というか、なにかあるとコロッと意見を変えちゃう。傍観者のような、いや事実上そうなのですが、あまり深刻に考えていない様子でした。
これもまた選挙というシステムの実像なのかもしれません。
NHKでの放送順でいえば後ろから2番目になるこれの感想を最初に書いた理由ですが、これを中国だけの問題として捉えている見方があって「なんだかなあ」と感じたのが大きいです。
もちろん、ドキュメンタリーの見方の正解はひとつではありませんので、いろんな見方もあって良いとは思います。
しかし、ああいった感想ばかりを抱いている人は、中国という国の先入観がものすごく強くて、視野が狭くなってる人が多いのではないか?と思ったのでした。
2011/03/30
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